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そんな好評と不評が入り混じった住宅街に、一組の家族が引っ越してきた、最も父の姿は無い。
母親らしい中年の女性と、薄く茶髪に染めた長髪の若い娘、そして黒髪をオールバック…そのままではないが、ややそれに近い感じに髪を後ろに撫でたような髪型の少年が1人、車から降りて、新しい住居となる一軒家の前に立った。
「立派な家じゃない、ね?広太」
隣に立つ娘…オレの姉ちゃんだが、そう言ってきたので、とりあえず頷いた。
「だな、さすが新しく建てられた家だけあって、ピカピカだしな」
ここに来たのはあまり良い理由があった訳じゃない、父の浮気が原因で離婚した母が、心機一転の為に、新しい土地に移り住むべく、この場所を選んだんだ。
元から会社では、かなりの地位にあった父は若い愛人を取り母を捨てた、裁判で莫大な慰謝料は得たが、引き換えに悲しさすら感じないくらい、簡単に家族を捨てて去った。
元々から気が強い姉ちゃんは烈火の如くキレた、オレもそれなりにショックだったが、まだ恋愛経験すら無いオレには、男女の…夫婦の問題については理解できないだろうし、口出ししようにも、幼稚な意見しか出そうにないので、黙って状況のままに受け入れる事にした。
「アンタたち、ぼんやりしてないで自分たちの部屋を選びなさいよ、業者さんに荷物を運び入れてもらうんだから」
眼鏡をかけた母さんは、オレと姉ちゃんにそう言ってきた。
いかん、もう終わった事を蒸し返して暗い気分になってる場合じゃない、新しい家に来たんだから、より条件が良い部屋を姉ちゃんより先に取りたい。
「分かったよ」
なんて返事をしているオレを置き去りにした姉ちゃんは、スタタタ!と駆け出して既に家の玄関をくぐっていた。
「姉ちゃん!?」
「はっはー、遅いよ広太、良い部屋はこの私が頂くわよ」
「なにぃぃ!」
俺は負けじと玄関に走り、靴を脱ぎ捨てて家に上がった。
姉ちゃんは既に二階に上がったようだ、早すぎる。
もとより姉ちゃんは長年に渡って剣道をやっていて、運動神経は良い。
俺も運動に関しては平均よりは上だが、姉ちゃんには常に一歩遅れている。
勝てるのは勉強くらいだ、特に国語と社会。
姉ちゃんは全般的に勉強は苦手だ。
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