鏡への“ゲート”

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(落ち着け、相手を間違えるなよオレ) 自身に言い聞かせながらも、袋から取り出した竹刀を上段に構えて待つ。 かなり暗いから相手側も間近に来るまで、自分には気付かない筈だ。 そうしている間にも、足音がどんどん近づいてくる。 谷口は深呼吸して、意識を集中した、心臓の音が邪魔だと思うくらい、鼓動は早くなっている。 カツ、カツ、カツ… (もう少し、後…数歩だ) 音の距離で相手の位置を大まかに察しながら、とにかく相手の顔を見逃すまいとした、暗いから…なんて理由でダチを叩きたくはない。 「………誰っ!?」 「………!…中島か?」 間近に迫った所で、相手の方から声を出した、しかし、おかげで谷口は足音の主が、ダチである事を知る事ができた。 「その声は谷口君ね?…驚いたわ、廊下にしゃがみこんでなにをしてるの」 谷口は緊張が抜けたように息を吐くと、竹刀を下ろした。 「青山かと思ったんだよ、もしアイツだったら、不意打ちで叩きのめして、お前らを探して逃げる気だった」 「無茶をするわね、もし失敗して青山に顔を見られたら、停学どころじゃ済まないわよ」 「た…確かにそうだな、すまん、改めて冷静に言われると…無茶が過ぎるよな」 竹刀を袋に入れつつ、谷口はバツが悪そうに頭を軽く掻いた。 「まあ、問題にならなかったから今回は良いとして、何か見つかった?私は残念だけど、何も見つけられなかったわ」 もちろん嘘だが、谷口に悪霊か何らかの魔の存在の説明をしても信じないだろうし、正気を疑われるだけだ。 見つけた“痕跡”からは自分1人の力で、何とか相手の情報を得るしかない。 「ああ、それなんだが、とんでもないモノを見つけたぜ」 谷口は中島と階段近くの隅に移動してから、中島が持っていたペンライトの明かりの元、青山の鞄から手に入れた…もとい、盗んだ写真と、メモ帳を見せた。 「この写真を青山が持っていたの?」 「そうだ、この写真を見てくれ」 谷口は盗んだ写真の一枚を、中島に見せた。 「……髪の色も髪型もまるで違うけど、高島さんよね?」 「いや、この写真の女子高生…この人こそが、高島さんの姉さんじゃないかと思うんだ」 そう言われて中島は『なるほど』と頷いた。
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