鏡への“ゲート”

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「何も無いか、中島が言った通りだったな、無駄足になった」 無人の職員室で、青山の机を調べていた小牧だったが、今回の事件に関連のありそうなモノは見つからなかった。 中をいじった形跡をなるべく少なくするくらいの配慮はしたが、さすがに細かい物が動いた形跡は隠しきれない。 指紋でも採られない限りは、断定する証拠とはならないが、それでも少し心配ではある。 だが、どうにもならないのも確かだ、呑気に小物を一つ一つを丁寧にハンカチやティッシュで拭いてる時間は当然ない、小牧はバレないのを祈って、職員室を去ろうとした…が。 「!?」 ドアの小さなガラス窓から、明かりが見えた、谷口か中島かとも思ったが、なるべく相手側から見えないように、ドアのガラス窓の端から廊下を見ると。 「くそっ、青山の野郎かよ、見回りに来たか」 小牧は急いで職員室の奥に戻り、ならぶ教員の机の影に身を隠した。 このまま通過してくれと祈ったが、青山は職員室のドアを開けて中に入ってきた。 懐中電灯を動かして職員室内を見回している、小牧はちょうど横並びの机の並びに方に助けられ、懐中電灯の明かりで照らされても、入り口の辺りからでは完全に机が壁になり、しゃがんでさえいれば見つからない。 「ふん、居ないか」 (『居ないか』だって?……もしかして、俺たちが校内に入ったのがバレたのか?!) 小牧は青山の独り言から、自分たちの存在が知られたと悟る。 すぐにでも谷口や中島を探して、学校から出なければならない、校舎内に長く居ればその分だけ、青山に発見される可能性が高くなる。 だが、行動するのは職員室から青山が去ってからだ、今動く事は出来ない。 「……ん?」 青山が自分の机の辺りに来ると、何かを気にして立ち止まった。 (なんだ?…もしかして俺、なんかモロに分かるような失敗したか?) 内心の焦りと緊張から、無意識の内に額から汗がでて、頬を伝う。 「おかしいな、机の上の様子が違う気がするが、ペンはもっと右側に転がしてあった筈だが、…気のせいか?」 (ちくしょう、いちいち細かく覚えてんじゃない!) 思わず言いそうになるが、ぐっ、とこらえて口を閉ざし続ける。
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