第1話【鏡魔の夜】

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ただ、部屋の隅にさり気なく、それで居て非常に自己主張が強い物が二本。 一本は木刀、間違ってもお土産屋さんで売られているような安っぽい物じゃない、材質は分からないが固い木製かつ、なかなかに重量感がある本物、姉ちゃんの今の相棒だ。 もう一つは、怖い事に血の跡が滲んでいる竹刀、姉ちゃんが中学生の頃、同級生にいた質の悪い数人の不良にブチきれて、この竹刀で滅多打ちにし、病院送りにしたと言う我が家の伝説的な竹刀だ。 ちなみに不良側も『たかが女に負けらんねーだろ!』と、ばかりに、数回に渡って大喧嘩になった、姉ちゃんもボコスカに殴られて、無傷じゃ済まなかったが、それでも全勝し続けて、ついに不良たちに負けを認めさせ諦めさせたと言う。 そんな経緯があってから、中学校では不良が頭を下げ、または避ける程の物語を作った。 ちなみに姉ちゃんは子供の頃から、ひたむきに剣道を習い、今や二段に至る凄腕だ、影響されて自宅で姉ちゃんの練習中に、俺も参加させてもらい、一年くらいは割と真面目に剣道を習った事があった。 でも試合に出たり、道場に行くわけではなく、あくまでも嗜み程度のつもりで習ったので、これから先も本格的に剣道を学ぶつもりは無いが、たまに素振りくらいはする。 とまあ…オレと姉ちゃんのプライベート情報を脳内で説明してみたが、全く意味が無いのに気がついて、オレは再び荷物の仕分ける作業に戻った。 ……………………………… 来週には学校が始まるので、数日ほど忙しい日々を過ごした、母さんは役所に手続きをする為に出かけ、姉ちゃんや俺は制服や鞄、ノートや筆記用具などを家から三キロくらい離れた店に行き、買い揃えた。 かなり長く続く道路に、その真ん中には高速道路があって、道沿いに歩いていると、車道のみならはず頭上からも、車が突っ走っている走行音が聞こえた。 その“中通り”にはスーパー、本屋、ビデオレンタル、ホームセンター、パチンコ屋、ゲームセンターなどが揃っていて、多少は娯楽性のある“通り”だった。 ただ自宅から三キロも距離があるから、ちょっと行こうか…と言うには、少しばかり遠い気がする。 自宅付近にあるのは、バス停の近くにあるコンビニくらいだ、やや足を延ばすと古びたスーパー、おばちゃんが経営している文房具屋、やや小さ目の胃腸内科の病院がある。
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