第1話【鏡魔の夜】

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「手製のブランコだろ、ほら」 オレにはちょっと小さいが、何とか乗れない事もない、丸太に乗ってちょっとだけ足を離し、少し勢いをつけて前後に揺らすと、ゆーらゆーらとロープに吊り下げられた丸太が前後に動く。 「なるほどね、ねえ、ちょっと私にも乗らせてよ」 何だか楽しそうに言うので、オレは丸太から降りて姉ちゃんに場所を譲る。 「ブランコなんてひさびさだわ、よーし、いくわよ」 そう言って思い切り揺らす姉ちゃん、いや、あまり勢いはつけない方が良い、何故なら… バキッ! 「きゃああっ」 姉ちゃんの体重に加え、あまり太くもない枝が勢いに耐えられそうにないからだ…なんだが、言う前に姉ちゃんは撃沈した。 その挙げ句には… ゴン☆ 「……ったぁぁぁ!!!」 まだ片側の枝に引っかかったまま側のロープに繋がっている丸太が、姉ちゃんの頭を打つ。 「ノォォォォ!!」 頭を抱えてしゃがみ込む姉ちゃん、もう少し考えろよ、さすがに“色々”と気を使って現状をキープしているとは言え、大人と子供では幾ら何でも体重に差があるだろ。 「大丈夫かよ」 「私の頭脳にダメージがあったわ、これで次のテストは追試決定ね」 「いや、追試があるのはいつもの事だろ」 「うわー、追試は嫌だ、何でこの世には試験なんてあるのよ、頭の悪い人間になんであんな苦難を与えんのよ、テストなんて考えた奴は鬼だわ、いや悪魔よ」 テストにそこまで…いや、姉ちゃんにとっては笑い話じゃないか、体育と音楽は『5』なのに、他は全て『1』か『2』だもんな。 しかも、全く勉強してないなら当たり前の結果なんだが、一応程度には勉強してたりする。 オレから見ても、姉ちゃんが苦手な数学や理科などの教科はともかく、他の教科なら平均的な『3』くらいにはなりそうなのだが… 勉強しても頭に入らないタイプなのかもしれない、一応程度の努力ではあるが、報われないのは見ていて悲惨だと、さすがに思わざるおえない。 とりあえず姉ちゃんのダメージが回復した所で、森を先に進んで行く、どれくらいの森か分からないので、迷子にならないよう、常に自宅の方を確認しながらだ。 姉ちゃんはそんなのお構いなし、ズンズンと奥に進んで行く。
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