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「おい、あんまり先に進み過ぎるなよ」
あまりに考え無しに奥に入りこんでいくので、オレは姉ちゃんに注意した。
「なによ、恐れてたら何も出来ないわよ、たかが森じゃないのよ」
そりゃ富士の樹海じゃないんだから、ひたすら真っ直ぐ突き進んでいたら、向こう側に抜けるだろうが。
…とは言え、この森には初めて入ったのだから、もう少し気を付けるべきだと思うんだがな。
こうしてしばし進むと、急に開けた場所に出た、そこは何と言うか…ゴミ捨てば場のような所で、何やら色々な物が無造作に山になるほど積み上げられていた。
「森の奥にこんなゴミ山があるなんてな、驚いたぜ」
「工事で余分な物が捨ててあんじゃないの?」
「いや、それは無いだろ、周りは木々に囲まれてるんだ、ショベルやダンプなんかの重機類が入れる場所じゃない」
そう、この場所は森の中にポツンと開けた所にある、それにいくら何でも工事中の廃材なんかを、こんな所へ無造作に捨てるだろうか?
「なるほど、いわれてみれば確かにそうね、でもさ、ちょっとゴミ山を見てみない?」
「なんでだよ、そんなゴミを漁って何すんだ」
「バカね、こういう廃材の中には、地味に面白い物があったりすんのよ」
おいおい、小学校じゃあるまいし…まして、仮にも女子高生がやる事じゃないだろ。
とは思ったが、姉ちゃんはゴミ山を楽しそうに吟味している、本音では止めたいが、…仕方ないか。
「ムム!?」
姉ちゃんがそう言うと、ゴミ山の一つに登り、そこから突き出ていた、一本の棒を掴んで引き抜いた。
ザリザリザリィ!
他のゴミと擦れる音を出しながら、姉ちゃんに握られた棒が引き抜かれる。
「おっし、取れたー!」
姉ちゃんはゴミ山の上で、伝説の剣でも引き抜いた勇者みたいな格好で、手に入れた棒を掲げた。
「…姉ちゃん、楽しいか?」
「スッゴく楽しい」
そこまで言われては、返す言葉が無い。
「んふふ~、…んん?」
姉ちゃんが何か唸っているので、また顔を上げてゴミ山の上を見ると、棒を手にした姉ちゃんが、棒の先の方を見て眉を潜めていた。
「どうした姉ちゃん?」
俺が問いかけると、姉ちゃんはちょっと怖い笑みを浮かべた。
「何だよ、その不気味な笑みは」
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