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12月20日、晴れ。
「神様の、バカ」
あの子、空が消えてから1ヶ月。
初めての楽しくも嬉しくもないクリスマス前に、俺は空にあげる筈だった青い帽子と、クルミ用の小さな茶色いマフラーを、いつもの場所に持って来てた。
いつもは俺と空とクルミとでいたのに、空が欠けると物凄く変な感じがする。
「空……」
どうしてだよ。
俺、コレ見付けて、絶対クリスマスプレゼントはコレだって思ったのに。
……どうして、買う前に消えちゃうんだよ。
クリスマスプレゼント、決めたのに無いと、空がいなくなったのを認めたみたいで、あげる事も出来ないのに毎日持ってきちゃってるけど。
逆に空がいないって事を毎日実感して、空しくなる。
でも、次の日も持って来て……って、悪循環。
バカだって分かってるけど、それでもつい持って来ちゃう。
11月の25日に、空が自分の家だって言ってたお屋敷に行ってみた。
住んでたのは怖そうな爺ちゃんで、最初は全く相手にしてもらえなかったけど、空の見た目とか癖とかを詳しく話したら、声を出さずに泣いていた。
その後、俺んちじゃ絶対食べれないような、豪華なケーキをくれて。
「また来なさい。また来て、あの娘(こ)の話を聞かせてくれ」って、笑って送り出してくれた。
「空と、食いたかったな」
持って帰ったケーキを、弟達は美味そうに食べてたけど、俺は食べる気になれなくて、全部弟達にあげた。
俺の独り言に、クルミはゴロゴロ喉を鳴らしながら、何故か小さく頷く。
まるで言葉が分かるみたいだな、と思って、慌てて首を横に振る。
有り得ないだろ。
――ギイィ
お屋敷の門が、大きな音を立てて開く。
爺ちゃんが散歩でも行くのかな?
そう思って、チラリと門の方を覗けば。
「久しぶり。大地君」
「……あ」
頭の中が一瞬、真っ白になった。
腰まで有る綺麗な黒髪。
黒い瞳が大きくて、いつも優しそうに細まるタレ目。
びっくりするぐらい、白い肌。
意外に低い背。
ふっくらしたピンク色の唇。
柔らかそうな頬。
全部、この1ヶ月、何度も何度も夢に見て。
起きた時に、なんだ夢かってガッカリして。
今だって、夢じゃないかって思わず右手でほっぺを抓ってる。
「ソ……ラ?」
嘘だ。
だってあの時、確かに空は消えたんだ。
俺の、目の前で。
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