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 8月18日、雨。  今日の空は、灰色の服に黄色い縦線が沢山入っている。  ポツポツと雫が降ってきて、それは次第に激しくなっていく。  なんとなく、脳裏に妖精のダンス、なんて言葉が浮かんで来て、次の瞬間には何を考えているんだと、頭の中で苦笑した。 「おい!」  そんな風に、わたしがぼんやりと空を眺めていると、遠くから彼の声がして。  声のした方を見てみると、少し大き過ぎる気がする黒い傘を差した彼が、遠くから走ってきた。 「ふふっ。今日は遅かったね?」 「え? ああ、図工で居残りさせられて……って、そんな事はどうでも良いんだよ!」  わたしにとっては、大事な事なのよ? という言葉を飲み込んで、出来るだけ寒さを見せないように、体に力を込める。 「お前、なんで傘差してないんだよ!」 「忘れたの」 「なら、学校の借りるとか! 友達と一緒に帰るとか! 色々有るだろ!」 「だって、帰ったらお風呂に入れば良いだけだもの」 「いやいや、それでも体は冷えるだろ! 風邪でも引いたらどうすんだよ!」  彼はそう言って、わたしに傘を渡そうとするけど、わたしは首を横に振る。  彼は今日は七分のシャツと長いジーパンを着ているけど、走って来た所為かズボンの裾は濡れていて、よく見ると腕や胴も、少しだけ濡れている。 「わたしの家、すぐそこだから」  少し冗談っぽい口調で、目の前の屋敷を指差す。  3階建てで、白い塀に囲まれた和風の屋敷は、庭は荒れ果てているけど、それでも黒い瓦の屋根と白い壁は立派に見える。  この辺りは高級住宅街という事になるらしく、周りの家も似たようなモノだけど、それでも普通の家より広いって事は、一応認識している。  恐らくだけど、ここから見える彼の通う小学校よりも、かなり広いんじゃなかろうか。  彼はわたしの指す先を見ると、一瞬傾げた後、目を丸くした。 「マジかよ……」 「マジだよ?」  ポカンとする彼に 「ね? わたしの家、近いでしょ? だから、傘は貴方が差して?」とケラケラ笑うと、微妙な表情をしたけど、もう1度 「わたしは貴方が帰ったら、すぐに帰るから。ね?」と言うと、渋々といった様子で頷く。 「……つーか、近いって言うより、もう目の前じゃんか」  彼の言葉に 「まぁね」と笑って、肩を落とす。 「うみゃ」  そこに、クルミが植え込みから、いつもよりもスリムな姿で出て来た。
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