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10月17日、曇り。
今日の空は、白か灰色か分からない色の奥に、少しだけ抜けるような青が見える服だ。
「今日は、来てくれないかもね」
「みゃーん」
今日は休日だから、彼が学校帰りにここを通る事は無いだろう。
クルミの鳴き声も、少し寂しそうだと思うのは、きっと気の所為なんかではない。
ずっと一緒だから、なんとなく分かるんだ。
「にゃっにゃっ」
風で揺れるわたしの黒い髪にじゃれていた筈のクルミが、急にわたしの腕をバシバシと叩き出して、意外に痛かったので、落ち着いて、という意味を込めて頭を優しく撫でる。
それでもあまり効果は無くて、どうしようかと考え込んだところで、背後にキキーというブレーキ音が聞こえる。
甲高いブレーキ音に、思わず体を震わせてしまう。
「よっ。クルミもお前も、元気そだな」
突然の声に驚き、慌てて振り向くと大きなビニール袋を籠に入れて、シンプルなシルバーの自転車に跨がった彼。
薄手の赤い長袖に、長い白のパンツ。
急いでいたのか息が切れていて、そんな時にわざわざわたし達の所に止まってくれたのかと思うと、少し嬉しい。
「休日に来るなんて、珍しいね。お使い?」
思わず目を細めるわたしに、彼も優しく笑ってくれる。
「おう。今買い物の帰りでさ。いないかなぁ、と思ったけど、ちょっと寄ってみたんだ」
彼は柔らかい笑みを浮かべながら、自転車を端に止めると、いつものように、わたしの右隣でクルミを撫でる。
少し見上げる形で、彼の自転車の籠に入った袋を見てみると、中身はお肉と牛乳と醤油とレシピ本までは、なんとか判断出来た。
レシピ本のタイトルが『小学生でも作れる☆簡単クッキング!』だという事から、どうやら彼が作るらしい。
更に、デカデカと『高学年用・第6巻』とも書いてあるから、少なくともあと6巻有るようだ。
そういえば、わたしはお母様に習ったは良いけど、ちゃんと作った事は無かったな。
「……お前さ」
「なぁに?」
不意に彼が話し掛けてきて、少しぎこちない動きで彼の方を向くと、彼はクスクスと笑っている。
それはイタズラっ子の笑みにも見えて、小さく首を傾げる
「いや、お前ってさ、いっつもここにいるじゃん? もしかして暇人?」
「……は?」
彼の言葉は予想外で、わたしが余程驚いた顔をしたのか、彼は勢い良く吹き出した。
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