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「ねぇ陸クン、私、喉が乾いた」
「あ、僕も炭酸飲料が飲みたい。カレーは僕が作るから、陸は久美ちゃんと飲み物の買い出しを頼むよ」
陸の手から包丁を受け取った僕は、まだまだ沢山あるジャガイモとニンジンを切り始めた。
ジャガイモを切りながら、鍋で炒めているタマネギが焦げないようにヘラも使う。
2人に、美味しいカレーを食べさせたくて、一生懸命に料理をした記憶がある。
ご飯も炊き上がった。
カレーもぐつぐつ煮込んで、食事の準備は万端である。
「それにしても遅いなぁ、コンビニとの往復で1時間はないでしょう」
2人が心配になった僕は、鍋をコンロから下ろすと、エプロンを放り投げた。
地元の不良とかに絡まれていたら、大変だ。
走った。
鉄道橋の影の下をくぐり抜けた。
そのまま駆けて駆けて、やがて静かに、走る事を放棄した。
土手を登る階段の脇に、太い幹の木が木陰を作っている。
「久美ちゃん‥‥」
2人の寄り添った影は、その木陰にかくれている。
僕はうなだれて元来た道を引返し、途中何度も転んだ。
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