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「郁也クン、第2ゲームも頑張ろうね」
「う、うん」
心のドンヨリが、僕の足を重くしている。立てない、体が動かない。
「どうした? 郁也クン? 足‥‥痛むの?」
久美ちゃんの顔がクイッと近くなった。
長いまつ毛が、何回もパタンパタンとまばたきをする。
そんなに見つめないでよ‥
「足はぜんぜん痛くないよ‥‥たださ‥‥」
久美ちゃんから目を逸らすと、また鉄道橋が視界に入ってしまう。
無理だ‥‥この場所だけはどうしても無理だ‥‥
──ポン──
へ? 肩を叩くのは誰?
「彼氏、第1ゲームは、ナイスファイトだったね。次は負けないよ」
あ、隣のイチャイチャカップルの、男の人である。
イチャイチャ彼氏が、笑いながバスを降りてゆく。
「どうやら第2ゲームは、料理対決らしい。私の得意ジャンルだ。負けないぞ!」
熟年カップルの彼氏サンも、爽やかに笑いステップを降る。
何だか皆が、僕を励ましながら会場へ向かって行く。
「郁也クン‥肩、貸そうか?」
‥‥‥‥
「大丈夫さ久美ちゃん! 僕はぜんぜん平気。元気元気」
そう、全然平気。
元気が出て来た。
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