春のご馳走ドッキドキ

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河川敷の野っ原に、一陣の北風がビュンと吹く。 「郁也クン、あのさぁ‥」 北風がまたビュン。 久美ちゃんは風に暴れるスカートを押さえつけ、次にゆっくりと、おでこにかかった髪をかきあげる。 「私、料理って、そんなに得意じゃないんだ」 知ってるよ。 家庭科の授業の時、どんだけ僕がフォローしてたか、忘れたのかい? 「久美ちゃん、平気平気! 去年の春から1人暮らしを始めて、僕は朝昼晩と自炊生活さ。好きだった料理の腕にも、それなりに磨きはかかっていると思うよ」 「キャッ、だから郁也クン好き。私のピンチの時には、何時もヒーローみたいな活躍だもんね」 それは、家庭科の調理実習の時だけね。けれども、はっきりと言われたら照れちゃうよ。 会場の司会席と思しき場所の隣には、何やらテレビで見た事のある顔が並んでいる。 あぁ、分かった。 グルメリポーターのAさんに、料理評論家のBさん、有名中華料理店のC料理長に、最近4冊目の料理本を出したアイドル歌手のDだ。 「郁也クン、あの人達って、誰?」 「‥‥‥久美ちゃんキミ、料理関係のテレビ番組とか、相変わらずに嫌いでしょ?」 「イエス、オフコース!」
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