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「チョチョチョ‥‥」
僕は堪らずに2、3歩前に進んだのだけれど、黄色いクマさんハッピの係員に、無理矢理応援席のパイプ椅子に座らせられてしまった。
「郁也クン、大丈夫よ!」
あっ、久美ちゃん。
「私だって少しは進化してるのよ。お料理くらいは、何とかなるわ!」
えっ、そうなの?
久美ちゃんは手際良く、テーブルの上にたたんであったエプロンを翻した。
肩ひもに両腕を素早く通して、背中にある腰ひもをキリリと結んだ。
「なるほど‥昔の久美ちゃんとは違うのか‥」
僕は少し安心した。
安心して隣を見たら、少しだけ嫌な気持ちになった。
足を投げ出した格好でそこにいるのは、運転手タカシである。
《料理の制限時間は30分です。女性の皆さんは、テーブル上にある食材を自由に使って、ご自慢の料理を作って下さい》
「おっ、佐々木君」
美男臭プンプン。僕、この人キライ。
「君の彼女、大丈夫かい?」
な、何だと。し、失敬だなタカシ。
が、タカシが久美ちゃんを指差した理由は、直ぐに分かった。
「く、久美ちゃん。エプロンが逆さまだよ!」
僕は大声で叫んだ。
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