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《それでは、料理開始ー!》
ピ─────ッ!
七海さんのホイッスルの音が、川原の小石の上を転がり、冷たい川面で弾けた。
15人のエプロン姿の女子である。
ホイッスルの音で機敏に動き出したのは10人。残りの女子はテーブルに並べられた食材を眺めて、これから作る料理の方向性を思案している。
久美ちゃんはもちろん5人の中の1人だ。
眉を寄せて、時々、小鼻を鳴らしている。
‥‥マズイ、久美ちゃんがメチャクチャ困った時にする表情だ。
あんなに沢山の食材を目の前にして、何を作って良いのか分からなくなっているのに違いない。
郁也‥‥何か良いアドバイスは無いのか? 郁也、思い出せ!
久美ちゃん‥料理‥久美ちゃん‥料理
考えても考えても、久美ちゃんと料理と言えば、小学校の調理実習の時の笑えない光景しか思い浮かばない。
久美ちゃん‥料理‥久美ちゃん‥料理‥
あ!
カレーだ。中1の時の久美ちゃんの誕生日会。
久美ちゃんお手製のカレーだけは、美味しかった思い出がある。
僕は立ち上がった。
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