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ラブレター。
僕は、前菜のソテーを小さな口へ運ぶ久美ちゃんの顔をチラリと見た。
そして久美ちゃんに気付かれぬよう、慌てて目を伏せる。
小学校の卒業を間近に控えた頃、僕はずっと好きだった久美ちゃんの下駄箱へ、ラブレターを入れたんだ。
どんな内容を書いたかまでは覚えてはいないけれど、3日も4日もかけて、一生懸命に書いたラブレター。
《2時間後、皆様には3階デッキの特設会場へお集まりいただきます。それまでに彼氏さんには、彼女さんへの愛情こもったラブレターを書いて頂きます。審査員による厳正な審査を経て、素敵なラブレターの上位3通に、金銀銅のメダルが送られます》
その日の帰り、僕の下駄箱には久美ちゃんからの返事が入っていた。
〈ずっとずっとお友達でいましょう〉という言葉が、ピンク色の便箋に書かれていた。
泣きながら家まで走った。
途中で、たくさんたくさん、転んでしまった記憶がある。
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