母親失格

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愛梨奈はカタコトだった言葉が、単語を繋げて喋れるようになった。 大人の会話を真似て、口調も大人びている。家族のことは、今も下の名前で呼ばせている。 「愛梨奈、こっちにおいで」 「たくちゃん。なんでしゅか?」 たくちゃんとは、お父さんのことだ。愛梨奈はお父さんの胡座の中に、ちょこんと収まる。 「親父はじーちゃんでよくね?」 「煩い、俺はたくちゃんなんだよ。なぁ、愛梨奈」 「うん。たくちゃん」 にっこり笑い、お父さんに抱き着く愛梨奈。女の子は生まれながらに甘えるコツを心得ている。
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