峰岸 佑太 その1

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 来いよ、オレは笑って、傍にあった、波打つような刀身の剣を握り締める。  誤解は解かなくていいな、と見切りをつける。  オレがいくら誤解だと言っても、オレが波多の姉を殺したと思っている波多の心には到底届かない。  復讐に捕らわれた人間に何を言っても無駄だ。  けれど、復讐するという憎悪が生きる活力になるのも事実だ。  だからオレは誤解を解いたりなんてしない、それが波多の活力なら。  あの子は弱いから、助けてあげて。  波多の姉はそう遺言を残した。  なんでオレに言うんだ? そう尋ねたオレに波多の姉は言った。  そう言えばあなたは面白いことをしてくれそうだから。  オレはにんまりと笑って、期待しておけと言った。
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