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窓の外を見ると、夜の闇が広がっていた。
「なぁ。外さ、今どんな感じだ? こっちは微妙に曇っているけど」
「ん? こっちはそうでもないよ? 結構星が見えるもん」
見ている光景が違うことに少し、寂しくなる。
「そうか。雲の流れも違うんだよなぁ」
「俺、雲に乗ってそっち行こうかな」
琢己の発せられた声に、自分と同じような物悲しさを感じた尚彦はふっと目元を緩ませた。
「ああ琢己は無理だわ。そんな小っこい身体じゃあ、隙間から落っこちちまうよ」
「……いつか絶対、尚彦の身長を抜いてやる」
「はは、楽しみだなぁ」と言いながらも尚彦は、きっとそんな日は来ないのだろうと思った。
そんな余裕を感じたのか、琢己が唸るように言う。
「今のうちに笑ってろよな」
はいはい、とおざなりに返事をし、そういえばと尚彦は琢己へ尋ねた。
「琢己、お前さ。勉強は? ちゃんと予習復習してるか? 俺が傍にいないからってさぼってないだろうな」
「え、やって……いますよ」
敬語になったその様子が、真実は違うと尚彦に伝えてくる。
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