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家の玄関のドアを開いた時、桜並木がにぎやかに目へ入ってきた。
おお、春爛漫だな。これは門出にちょうど良い雰囲気……なのか? とそんな事を考えながらぼんやりとたたずんでいると、背中を強い力で押される。
「早くそこをどけよ……お前、そんなボケっとしてて、本当に一人で大丈夫か?」
幼馴染の尚彦(なおひこ)が、前に回り顔を覗き込んできた。
「だ、大丈夫だよ……多分」
嘘だ。本当は、不安で仕方がない。
俺と尚彦はずっと一緒にいた。物心つく頃にはすでに仲が良くて、小学校、中学校と、別のクラスになろうとも放課になればすぐ、各々の教室を飛び出して二人、遊んでいた。
そんな俺達を「ホモだ」とはやし立てる奴もいたけれど、そんな事気にならなかった。
まぁ、そういう奴には尚彦の鉄拳が飛んだのだけれど。
そういう風に過ごしてきたのに初めて、離れた生活を送る事となってしまった。別の高校へ通う羽目になったのだ。
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