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19.あかいはなりぼん
それは 長い梅雨の雫がひと眠りしており 久々に太陽が仕事を頑張っていた 蒸し暑い日でした
タマはひとり 丘の上で木陰にたたずみ 暑さをしのいでいました
そのとき 突然樹がしゃべりかけてきました
「あなた確か タマって名前よね?」
振り返ると しゃべっていたのは 木ではなく 木の反対側にタマと同じく寝そべっていた ネコの少女でした
猫には珍しい 赤みをおびた毛なみをなびかせ 彼女はこちらに近づいてきました
タマは その毛色に見覚えがありました 確か ポールのネクタイの模様の色も・・・
「君は誰? なぜ 僕の名前を知っているんだい?」
「わたしはマリア 花リボンのマリア 頭の上にお花みたいな模様があるでしょ? わたし蝶ネクタイのポールの妹です お兄ちゃんからあなたたちのこと いろいろ教えてもらっているの」
「 へー ポールの妹さんか よろしくね!」
「お兄ちゃん言ってたわ あいつらおかしな歌を歌っている って」
「おかしな歌って・・・ 傷つくなあ・・・」
「ウフフ お兄ちゃんは悪い意味で言っている訳ではないわ 彼なりに 褒めているつもりだったみたい 表には出さないけど とても喜んでいたわ 何しろ 親友が楽しそうに歌っているんだもの」
「親友?」
「あら? ジョンから聞いてなかった? ジョンとお兄ちゃんは大の仲良しでね あなたたちが七匹の殿様と呼ばれるずっと以前に わたしたち兄妹と ジョンとジョージの兄弟は一緒にいたんだけど わたしたちは飼い猫だったから・・・」
「 ・・・」
「そういえば あなたも飼い猫だったわね あなたがうらやましいわ あなたは ずっとそのままでいてね」
タマは まさか自分より年下の女の子から そんなセリフが出てくるとは思いもよらなかったので 驚きましたが 彼女にそっと返しました
「君も そのままでいればいいんだよ」
彼女は そっとほほ笑んで 話を続けました
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