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23.おうさまのいないさいばん
ネコの王国のお城には 様々なしかけがあります しかけと言っても 誰かが故意に作ったわけではなく 建物の老朽化や 誰かのいたずらによって作られた穴やでこぼこのことです
王と王妃の寝室にも そのトラップがありました 部屋の隅っこの床が外せるようになっており その下には ぽっかりと空いた空洞があったのです このトンネルは ちょうど猫一匹分通れるほどのものでした そして王様は 時々この穴を使ってこっそり城から抜け出すのです
この日も王様は ジーのすきをついてこの穴から 外へと脱出したのでした
さあ いざ裁判が始まろうとしているのに 裁判長はいずこやら ジーをはじめとして 王様に仕える臣下たちは気が気ではありません
大赤目のクロは 普段からけわしい顔が ますます固く黒くゆがんで 貧乏ゆすりを細かくしていました
ラピスラズリのシロは いつもより血の気が引いて顔面蒼白であり 神経質に爪をかんでいました
大赤目のクロが叫びました
「老執事 これはいったいどういうことだ!」
「ひぃ・・・ 申し訳ありません 私が目を離した隙に・・・」
ラピスラズリのシロが付け加えました
「だいたいアナタは いつも王を甘やかし過ぎなんだわ! それにつけあがって王はますますわがままになるのよ!! いい? アナタを職務怠慢で解雇することもできるのよ?」
「はい 十分承知しております・・・」
大赤目のクロがさらに
「それに 今回の件は王の進退そのものに関わってくるぞ いいか? 我々の後ろ盾を利用すれば 王の首などすぐに飛ぶことを肝に命じておけ!」
と鬼の形相で吐き捨てました
「待ってください!」
そこへ王妃が急ぎ足で参上し 話に割り込みました
「王からことづてがあります このことづてを伝えるのが遅くなったのは わたくしの責任です ですから 仮に罰するのなら王でなく このわたくしを罰してください」
「・・・」
「もういい それで その言伝とは?」
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