第4章 同窓会

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第4章 同窓会

 その夜、大学時代のサークルの同窓会があったので、真之は、仕事を、定時で切り上げた。  北海道大学近くの地下鉄南北線の北18条駅まで歩き、そこから地下鉄に乗った。  すすきの駅で降りて、大学時代からよく飲んでいた居酒屋の「つぼ八」に向かった。  煌(きら)びやかねネオンの氾濫する歓楽街を歩くのは久しぶりだった。  時々、学生たちと飲みに行くにしても、大学周辺の安い居酒屋ぐらいだった。  久しぶりに見たススキノのネオンが目に眩しかった。     アメリカから帰ってきてから札幌での生活は、大学の研究所とベンチャー企業を行き来して、時々、家に帰るという研究漬けの生活だった。  実家に居候を決め込んでいる真之は、家でする事は、風呂と飯と睡眠ぐらいのものだ。  社会的には、先端医薬研究所の統括研究員という立派な肩書きを持ってはいるが、実家では、ぐうだら息子だった。  両親も、四十路前の独身男の息子には複雑な心境だろう。  恐らく、内心では、新薬の開発ばっかりしてないで、嫁の開発もしろと思っているのは間違いない。  時々、母親には嫌味を言われることもあるが、実家にいると、掃除、洗濯、食事と何でもやってもらえて、研究活動に集中できる。  楽なので、つい甘えてしまっている。  10年前に、和子との辛い別れがあって以来、何人かの女性とは付き合ったし、今も恋人はいるが、最後の一歩を踏み出す気にはなれなかった。
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