1人が本棚に入れています
本棚に追加
第5章 元カノの家
真之の会社「札幌ゲノメディカ」は、札幌市の郊外、北区の百合が原公園に近い場所にあった。
百合が原公園は、札幌駅から北へ7キロほどに位置し、公園から南東へ1キロの所には、丘珠(おかだま)空港がある。
丘珠空港は、主に、北海道内の路線を結ぶ空港で、会社の窓からは、上空を旋回する飛行機の機体が良く見えた。
同窓会で、和子の噂を聞いて以来、真之は、気になって仕方なかった。仕事が上の空になってしまうので、思い切っては和子の自宅を訪ねてみることにした。
会社から車を飛ばして、和子の住む札幌市発寒へと向かった。
近くにあったコンビ二の駐車場に、車を停めてから、サングラスを掛けて変装し、和子の自宅を探し歩いた。
表札に、
【 清田文忠・和子・由美子・幸明】
と刻まれた一軒家を見つけた。
家の中をのぞいてみたが、誰もいないようだった。
この家で、自分の娘かもしれない由美子と和子が暮らしている。
そう思うと妙に自分だけが除け者にされているような寂しい気分になった。
暫(しばら)くすると、学校帰りの子供たちの声が聞こえてきたので、怪しまれないように、清田家から少し離れて、様子を窺(うかが)った。
手を繋いだ仲の良さそうな姉と弟が、ランドセルを背負って帰ってきた。
真之は、その女の子を見て、和子の娘であると直感した。
目元やシャープな顎(あご)の形がそっくりだ。
すらっと伸びた高い鼻や大きな口が、自分に似ていると思った。
二人は清田家の門を開けて、中に入っていった。
最初のコメントを投稿しよう!