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「はーい、じゃあお着替えしましょうね」
十六歳にして着替えの世話をしてもらう俺を誰が笑わずにいてくれるだろうか。
洋服だけならまだいい。おむつまで取り替えてもらっちゃって。
まあ今までの生活から考えてみれば、とても恥ずかしく俺にとっては悲惨な事実だ。
看護師さんは表情も変えず、笑顔でやりたくもないことをやってくれる。
できれば俺も、あなたにやってほしくはなかった。
美人な看護師さんに、笑顔で下半身のお世話をしてもらうだなんて。
「(屈辱だよなぁ‥‥)」
はい、終わりましたよ、と何度見てもまぶしい笑顔を向けて仕事を終える看護師さん。
この状況も二桁を超えるのになかなか慣れない俺は、その笑顔から顔を背けてただ一言、ありがとうございますとだけ告げた。
二週間前。
走ることが好きな俺が、陸上部で一、二を争っていた俺が、事故に巻き込まれ下半身不随になった。
事故直後は意識がなく、目を開ければそこにはあるはずのいつもの生活がなかった。
真っ白な天井と見覚えのない部屋に俺の頭は意外とすんなりと現実を受け入れた。
ああ、俺は事故にあって、なんらかの負傷をしたのだと。
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