第3章 社内抗争

6/7
前へ
/32ページ
次へ
「今日は、それを補うための新企画について話したいと思います。軽井沢では、高原ブライダルが常識です。しかし、札幌では都心でのホテルブライダルが常識なのです。私自身、軽井沢に来て、自然と一体となった高原ブライダルは目から鱗(うろこ)でした。ブライダルの新企画として、札幌で、高原ブライダルを展開することを考えています」 「最近の札幌のブライダルの動向はどうなっていますか?」  愛子は、尋ねた。 「先月、市場調査のために札幌へ出張に行ってきました。結果は、予想通り良好でした。新しくオープンしたホテルの殆どが、この地図にありますように、札幌駅周辺に建設されていましたし、ブライダルホテルの殆どが、札幌駅から中島公園に掛けての都心部に集中しています。  札幌では、高原ブライダルは、未開発のままでした。今こそ絶好のチャンスです。都心の開発が終われば、その矛先は間違いなく緑豊かな郊外に向くでしょう。それから参入したのでは遅すぎます。先んずれば人を制すです。ここは、積極的に打って出るべきです」  稲葉は、幹部たちに熱弁をふるった。 「稲葉さん、札幌の人口は何処くらいですか?」  愛子は冷静に尋ねた。 「札幌の人口は二百万人に迫る勢いで、年々、増加しています。隣接する石狩市(いしかりし)、江別市(えべつし)、北広島市(きたひろしまし)、小樽市(おたるし)を含めれば二百五十万人以上となります。更に、札幌市周辺には大学が多く、若者が多いのがメリットです。卒業後に札幌に就職した若者の結婚が見込めます。高齢化が進む軽井沢周辺に比べれば、無尽蔵ともいえるパイがあります」  幹部たちは、稲葉の話に引き込まれた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加