第4章 セックスレス

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 その日の午後、軽井沢の新緑祭りの一環として行われたフォトコンテストの表彰式があった。  本来ならば、観光協会の理事を務めている寛司が顔を出すべきだったが、不在のため、愛子が代理で出席することになっていた。  東京から軽井沢までは、新幹線で一時間ちょっとだ。熱海からでも出席しようと思えば、直ぐに戻ってくることが出来るはずだが。。。寛司は出席を断った。  表立った理由は、熱海での仕事が忙しいからとしていたが、本当の理由は別にあった。  数ヶ月前、観光協会の理事会で、寛司は、フォトコンテストの表彰式を自分のホテルで開催したいと提案したが、却下された。  それで、子供のように臍(へそ)を曲げているのだ。  愛子は、髪と衣装のセットをしてもらうために、ホテル専属のスタイリストの萩原歩美(はぎわらあゆみ)を、プライベートルームに呼んだ。  歩美とは同い年という事もあり、副社長と従業員という立場を超えて、気さくに会話できるのが、何よりも楽しかった。  また、日頃しないような派手なスタイルも積極的に勧めてくれて、新しい自分を発見できることも楽しかった。  その日も、歩美のアドバイスに従って、ポニーテールにしてみた。前髪はアップで綺麗にまとめて、後ろ髪は、高々と派手に結(ゆ)わえた。  歩美との会話で、稲葉の話が出てきた。  今、女性従業員の間では、一番人気らしい。ハンサムで身長が高くて、仕事も出来る。  雰囲気からすると、歩美も憧れているようだった。
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