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背丈が高く、沢山の花を付けるという特徴を持っている花だ。
最近、観光協会でも、この希少な山野草を観光に生かそうという動きが出ていて、「軽井沢黄菅」という愛称を付けて盛んにPRしていた。
軽井沢で観光業を生業(なりわい)にしている者にとって、自然保護と開発の両立は、永遠のテーマ だった。
その日の会議でも、稲葉と石墨の間で白熱した議論が交わされた。
稲葉が反対する理由は、地元住民の反対だった。
地元の反感を買ったまま押し進めれば、企業イメージの低下は避けられない。もしそうなれば、ブライダル業が大打撃を受けるというのが彼の主張だった。
二人の激しいやり取りに柳沢が割って入って、専務の石墨に質問した。
「軽井沢っつうとテニスコートだろう。何んで、テニスコートは作らねぇだ?」
「柳沢さん、だからあんた達は、駄目なんだ。現状を見なさいよ。かつてのテニスブームで、軽井沢にはテニスコートが腐るほどある。だが、殆どガラガラですよ。満杯になるのは、学生の合宿や大会がある夏休みのほんの一時期だけです。そんな物を作るのは、正直言って、愚の骨頂です」
石墨は、柳沢をボロクソに、扱き下ろした。
柳沢は、立腹して声を震わせた。
「しかしだ。スポーツ施設と銘打ってテニスコートもねぇようじゃ、駄目じゃねぇかい。軽井沢でテニスは、基本中の基本だに」
石墨は、頭を左右に振ってから、子供を諭すような口調で言った。
「何故、周りと同じことをやろうとするのかな。他と違うことをしないと、今の時代、生き残れないんですよ。だから、あなたは駄目なんですよ。ここを使わないと、ここを」
石墨は、指で頭を示した。
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