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私は少し重い扉を開けて、少し冷たい空気が漂った一室に入った。
この部屋はPEAの建物の最上階にある部屋。
入った途端に中にいた3人中、部屋の本棚を整理していた2人が扉の方に顔を向けるが、なんだ、といった風につまらなそうな顔で作業に戻る。
2人は普段はボディガードのような役割を果たし、護衛仕事がない時は緊急時以外は、この部屋の雑用などの仕事をしている。
そして、その主人たる奴がこいつ。景色が見えるガラス張りの窓を背に、だだっ広い机に山積みの様に重ねられた書類を隅に置き、黙々とこっちに私に目もくれず書類に目を通してはハンコを押して次の書類に手をかける。
ホント、機械みたいに休まずに仕事しているこいつには頭が下がる程だけど、このPEAの幹部の仕事を当たり前にしているだけなんだ、こいつは。前にそんなことを言っていた。
「梛耶(なや)、戻ったよ」
そう一声かけると、やっと手を止めて顔をあげる。綺麗な藍色の瞳が私を捉え、その目が少し細められた。
「ああ、戻ったんだね。気づかなかった。...お疲れ様。仕事はどうだった?」
さも今気づきましたって感じだけど多分扉を開けた瞬間に私だと気づいているはずだし、時間的に私の仕事が終わったと分かっていると思う。
こいつはあからさまな嘘をつく。
「簡単な仕事だったよ。弌級の人が最後に仕留めてくれたから助かった。この後、ダストゲートして終わりなの」
自分で仕事はどうだったと聞いておきながら、聞いた瞬間に興味なさそうに書類に目を落としている。
「それならよかった。じゃあいつも通り報告書よろしくね。あと今回の件、申し訳ないけど今日中に報告書を僕に提出してくれないかな」
「...ん、わかった。...あ、あとさ...」
適当に返事をして、梛耶の机の上にある、仕事を済ました後に書く報告書を手にとる。
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