第一章―思わぬ告白―

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 蝉の声がうるさい。  青々と茂る木の群集。それがやけに、目障りだ。  そして、目の前に立つ男。  いつも堂々としているせいなのか、はたまた男が持つには異常なほどの色香のせいなのか、はたまたこいつの顔立ちがとても整っているせいなのか、それともその背丈が百九十センチもあるからなのか。とにかくこの孝大(こうだい)というクラスメイトは老若男女問わず、惹きつける。  そんな奴から今、信じられないような言葉を聞いたような気がする。  眉を顰めながら目を見開いてしまった。その真っ直ぐに向けてくる視線をどこかにそらしてはくれない……のか。 「好きなんだ」  目どころか口まで大きく開いちまっただろうが。  ――はっきり言おう。俺は、孝大が嫌いだ。  僻みと言われようとも、妬みと言われようとも、とにかくこの男が気に食わない。
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