番外編・思わぬ要求

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 いや、抱かれることには確かに抵抗があるけれど、それでも真剣に言われたらばやってやらないこともない。しかしだなぁ。俺にだって男としてのプライドがあるんだ。  童貞な上、入れられる側だと決めつけられては素直に許可を出せない。  孝大が目蓋を伏せた。 「好きな奴だからこそ、抱きたいんだ」  だからさぁ。 「そりゃあこっちも同じことだろ」  鼻を鳴らす。  伏せた目蓋の下からじと目で見てくるな。 「……言われたことがない」 「何をだよ」  眉をしかめながら首を傾げると――お、おい。瞬く間に顔を赤らめるな。びっくりするだろ。 「好きだ、という言葉をお前から言われたことがないっ!」  やられた。そこを突かれてしまうとぐうの音も出ない。
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