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「まぁ確かに。お前から言われなければさぁ。もうあと半年はこのままだっただろうし」
左眉を上げてやると、顔を顰めてきた。
「それは嫌だ」
「そんなにしたいのか」
まぁ高校生だもんな、俺ら。
「そうではなく」
今更ストイック振るなよ。
「言葉で感じられないのならば、肌で感じたい」
……おぅっ。真綿で首を絞められたような感覚だ。
「そ、そうか。じゃあ明日な!」
孝大の横をすり抜ける。
何はともあれ逃げるが勝ちだ。
俺のこの口はしっかりチャックがしまり、中にあるものを決してこぼそうとは思わないようだ。
それは仕方がないとしたいところで――孝大と俺の、スペックの違いがそうさせるんだろうなぁ。
あいつは凄い。イケメンだし、家も金持ちらしいし、勉強もできてスポーツも万能だ。性格が強引であることだけが欠点だけれど……その一つ、だけ。
俺は違う。顔も平凡。性格なんて妬みっぽいし、すぐに頭へ血が上ってしまう。勉強もスポーツも普通レベル。家だって、親父はしがないサラリーマンだし、お袋はパートをしている。
どちらかが女だったとしても、二人で道を歩いていてカップルだと思われる可能性は低いだろう。下手したらば主人と召使だ。ああ、それは自分を蔑みすぎか?
――追いかけてこないのか。背後に気配はない。
しかし、走る。酸欠になり、自分でも嫌になるこの思考を吹き飛ばしたかった。
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