第一章―思わぬ告白―

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 俺は、こいつに比べたら本当に、平凡だ。比べるならば俺は、単なるカブトムシ。こいつは希少種であるヘラクレスオオカブト。そのくらいに大きな差があるだろう。  恋をした女はこぞって孝大が好きなのだとぬかすし、バレンタインデーにチョコレートを期待しながら下駄箱をあけて肩を落とす俺のすぐ傍でこいつは、手渡しのプレゼントを貰いやがる。  そんな苛つく存在を同性として気に入るような人間はこの世にいるのだろうか。いるとしたらば相当包容力があるのかもしくは、同性愛者なのだろう。  で、お前はまだ俺に何か言う気か。その切れ長な二重の目よりビームのように強い視線を向けてくんな。 「好きなんだ」  ……いや、だからさぁ。  今度は耳の穴までもが開いた。 「好きなんだ」  おい。もう開ける穴なんて、ねぇぞ。  その真剣すぎる表情をやめろ。そして何度も同じ台詞を吐くのもやめろ。てめぇは壊れたレコードプレイヤーか。
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