日曜日のクラブ

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いよいよ日曜日がやって来た。今日は慶を探しに、みんなでMIKATUKIへと潜入する。 昼過ぎに誉さんが迎えに来てくれることになっているので、今は松風館の前で彼を待っている最中だ。 俺の隣に並ぶのは屋代と神田と九条、いつもの三人。彼等が一緒にいてくれると、それだけで心強い。 「今日、慶は本当に来るのかな?」 皆が緊張で口数の少ない中、ふいに神田がそう呟いた。 MIKATUKIに慶がよく行くことはもうバレているわけなので、わざわざ捕まるかもしれない場所には来ないかもしれない。でも可能性があるなら賭けてみたかった。 「今までは全く行方が分からなかったんだもん、もしかしたらいるかもしれないってだけでも良いんだ」 「そうだよね。ごめん、変なこと言って」 「ううん、一緒に来てくれるのすごく嬉しい! ありがとう神田!」 そんな話をしていると、遠くからエンジン音が聞こえた。見るとダークグレーの車がやって来て、松風館の前で停車する。 「誉さんだ!」 そして開いた窓から顔を覗かせる誉さんを見て、俺たち全員が「えぇっ!?」と悲鳴を上げた。 「お待たせ、みんな!」 「誉! その髪……!」 屋代が指を差す誉さんの髪は、まさかの真っ黒……! 誉さんといえば屋代と同じ赤い髪がトレードマークだと思っていたから、こんなのまるで別人みたいだ。 もちろん黒髪も大人っぽくてめちゃくちゃ似合ってるんだけど、やっぱりすごい違和感っ! 「一瞬、誰か分からなかったです!」 「びっくりした!」 すると誉さんは、そんな俺たちのリアクションを見て嬉しそうに笑っている。 「黒もいいでしょ? 上からスプレーしてるだけだけどね。やっぱり赤いと目立つから。」 「本当に驚きました……」 「あははっ、要とお揃いがいいからまた赤に戻すけどね」 「おいっ! 急なブラコン発言やめろ!」 顔を真っ赤にして怒鳴る屋代を軽くあしらって、誉さんが俺たちに車へ乗るように促す。 屋代は助手席へ、俺と神田と九条は後部座席へと乗り込んだ。 「まずは慎の働く美容院に行くね」 「えっ? 慎さんの?」 「うん、貸し切っといた。そこに慎と雄二郎がいるから、みんなを変装させてくれるよ」 「は、はい」 美容師の慎さんと、アパレル店員の雄二郎さん。前回は彼等の手によって新人キャバ嬢に仕上げられてしまったけど、今回はどんな格好なんだろう……。 俺が小さな溜息を零すと、前に座る屋代が小さく笑っていた。 そうだ、屋代にはあの女装を見られたんだった……。可能なら忘れて欲しい。間違いなく、あれは俺の黒歴史だから。 *** 「みんな! いらっしゃっい!」 美容院に入ると、テンションの高い慎さんと雄二郎が揃って俺たちを出迎えてくれた。 神田と九条は今から何が始まるのかと、そわそわとして落ち着かない様子だ。 「はーい! 四名様ご案内!」 「人数が多いんでテキパキやっていくっす!」 まず神田と九条が雄二郎さんに連行されて、店の奥へと連れて行かれた。 そして次に、慎さんが屋代の手を取ってニッコリと微笑む。 「弟くんの赤い髪も目立つんで、上からスプレーしますね! ちゃーんと誉さんとお揃いの黒髪にするっす!」 「馬鹿っ! 別にお揃いのこだわりねーから!」 屋代ってば、からかわれて照れている。そして屋代の髪が黒く染められていくのを見ている誉さんは、悪戯っ子みたいで楽しそうだ。
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