ツインテールとシュシュ(1)

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「お姉ちゃんがほしかった……」  わたしは独り言のように言った。「年の離れたお姉ちゃん。なんでも気づいてくれて、なんでも相談乗ってくれんの」 「そーゆーのって友達じゃだめなの?」 「……」 「あたしみたいに? テキトーにオトコと付き合ってきたようなヤツじゃムリ?」 「……友達だから話せないことだってあるよ」  そう……。エリナはさびしげにつぶやく。  わたしは言った。「とりあえずきょうは無理だから」 「なに。あたしに恋の悩み話すこと?」 「うちに泊まること」 「じゃあそのうちならいいんだ」 「休みの日がいいと思う。うち遠いから」  本当のことを話すつもりでわたしは言った。が── 「だよね。『埼玉のほう』ったら栃木とか群馬だもんね」  わたしは言葉を継げなくなった。打ち明けるまでもなく、彼女は気づいていたのだ。そんな予感はしていたけれど。  エリナは続けた。「あたし行くよ。社交辞令じゃなくてマジでね」 「うん。楽しみにしてる」 「それ、社交辞令丸出しじゃん!」 「ほんとだよ!」  わたしたちはようやく笑い合った。のち、有楽町でエリナは降りた。「またあしたね」と彼女に微笑みかけられたが、免疫がついたのか今度はなんの反応も起こらなかった。  それから5分と経たずメールが届いた。『さっきユカ4人家族って言ったけどあんた入れたら5人じゃん 勝手に4人にしちゃダメだよ』。これっていちいちメールで突っ込むようなことなんだろうかと思いつつ、わたしは続きを読む。『ちなみにうちのクラスの人数知ってる? 35人だよ もちユカも入れて そこんとこ忘れないで エリナ』。これに対しわたしは『4人家族なんて言ってないよ~。家族の人数が4人って言ったの。それにクラスの人数なんて知ってて意味あるの?』と、怒った顔の絵文字を交えて反発した。エリナの速さに負けじと必死でメールを打っているうちに、電車は上野を過ぎていた。
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