ツインテールとシュシュ(1)

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『あした』と呼ばれた日がきょうになる。時の流れに待ったはなく、わたしは彼のいない2度目の昼休みを迎えた。かけがえのないものだったこの時間は、いまや長く孤独なものでしかない。きのうと違い、わたしは1人だった。これまでの習慣に従って教室を去り、あとはトイレの個室にこもっていた。 『どこいんの?』  そのさなか、メールが届いた。わたしがいまや教室を去る理由がないことを知るのは、いまのところエリナしかいない。彼女がそのへんの事情を誰かに話していない限りは。 『おなか壊しちゃった』とわたしは返す。 『戻っておいで 弁当持ってトイレなんて趣味悪いよ』 『いい』 『なんで 別に恥ずかしいことじゃないじゃん男に振られたことくらい』  わたしが返事に迷っていると、『今そっち行くよ』と追加される。 『ほっといて』  そう告げると、それっきりメールは来なくなった。もちろん本人がこの場に押しかけてくることもなかった。彼女だっていま頃、わたしなんかよりよほど気の合う友達とお昼をともにしているのだ。なんでもないとケータイを閉じ、また仲間内の談笑に加わるその様子が想像できた。  片やわたしはといえば、ケータイを閉じたらまた1人きりの世界に戻ってしまう。いま、わたしの喜怒哀楽を主体とした感情は徐々にその働きを取り戻しつつあるのかもしれない。だからこそ1人きりになりたいと思い、一方で自ら選んだ孤独をつらく感じるのだろう。わたしはただ便座の蓋に腰かけ、5時間目開始の予鈴を待った。せめてお弁当に手を付けようかと思ったが、たしかにこんな独居房より狭く薄暗い場所で食事なんて悪趣味だ。だいいち、食欲なんて湧きようがない。けれど結局、わたしはそれを平らげた。おなかが鳴っては恥ずかしいし、おまけに午後は2時間続けて体育となる。女子の孤食はむなしいが、それだけなら涙が出るほどではない。  教室に戻ってもわたしとエリナが口を利くことはなかった。そのまま午後の授業にのぞみ、やがて下校の時刻を迎える。しかしHRを終え席を立ったところで、「待って」と彼女の声がかかった。
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