ツインテールとシュシュ(1)

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 そのとき、エリーっと呼ぶ声が響く。ごめんパス! 彼女が大声でそう返すとわたしに向き直った。「一緒に行こ」 「行きなよ」わたしはあえて彼女を促す。「付き合い悪いって思われちゃうよ」 「思われないよべつに」 「わたしなら大丈夫。もうあんなことしないから。家族にもクラスのみんなにも迷惑かけたりしないから」  だからお願い行って。短くそう告げると、わたしはエリナを振り切るように教室から駆けだした。ユカ! と彼女があとを追ってくるのを無視して、昇降口で靴を手にして表へ飛び出し、駅への道のりを全力で走った。しかしエリナもしぶとくついてくる。そのうち、キャッ! と短い悲鳴がした。振り返ると、彼女が地面に手を着いている。ため息をつき、わたしはその場に駆け寄る。すると彼女の手ががっしりとわたしの腕を捕らえた。 「聞いてる。あんた陸上やってたんでしょ?」激しく息切れしながらも、したり顔で彼女は言う。「こうでもしなきゃ捕まんないじゃん。しかも上履きのままって反則」 「もうほっといてよっ! 1人になりたいの」とわたしは彼女の手を振りほどく。 「ユカ!」すると一転、彼女の表情が険しくなり、今度はわたしの両肩をがっしりと掴んだ。「もう一度聞く。あんたにとってあたしってなんなの?」 「……」 「友達が一緒じゃだめなの?」 「……」 「べつにあたしじゃなくてもいい。ナカちゃんとか、ほかにも友達いるじゃん。なのになんでそうやって1人で抱え込んでんの?」 「……。なんでエリナはわたしに構うの?」 「え?」 「隣の席だから? 宿題見せてもらえるから? いじりやすいから? フシギちゃんだから?」わたしは反撃するように、思いつく限りのことを矢継ぎ早に聞いた。「それともなんか特別な理由でもあるの?」 「それは……」と言いつつ、彼女は思案顔になっていた。「ってかそんなにあたしじゃだめ? ……ちょっとショック」 「おーい」  そのとき、大きな人影がわたしたちに駆け寄ってきた。杉本くんだ。 「なに追っかけてきてんのあんた」エリナがぶっきらぼうに言う。 「ケンカ? だったらおれが仲裁してやるよ」彼はそう言うなりわたしの手を高く掲げた。「須藤さんの勝ち」
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