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そのとき、エリーっと呼ぶ声が響く。ごめんパス! 彼女が大声でそう返すとわたしに向き直った。「一緒に行こ」
「行きなよ」わたしはあえて彼女を促す。「付き合い悪いって思われちゃうよ」
「思われないよべつに」
「わたしなら大丈夫。もうあんなことしないから。家族にもクラスのみんなにも迷惑かけたりしないから」
だからお願い行って。短くそう告げると、わたしはエリナを振り切るように教室から駆けだした。ユカ! と彼女があとを追ってくるのを無視して、昇降口で靴を手にして表へ飛び出し、駅への道のりを全力で走った。しかしエリナもしぶとくついてくる。そのうち、キャッ! と短い悲鳴がした。振り返ると、彼女が地面に手を着いている。ため息をつき、わたしはその場に駆け寄る。すると彼女の手ががっしりとわたしの腕を捕らえた。
「聞いてる。あんた陸上やってたんでしょ?」激しく息切れしながらも、したり顔で彼女は言う。「こうでもしなきゃ捕まんないじゃん。しかも上履きのままって反則」
「もうほっといてよっ! 1人になりたいの」とわたしは彼女の手を振りほどく。
「ユカ!」すると一転、彼女の表情が険しくなり、今度はわたしの両肩をがっしりと掴んだ。「もう一度聞く。あんたにとってあたしってなんなの?」
「……」
「友達が一緒じゃだめなの?」
「……」
「べつにあたしじゃなくてもいい。ナカちゃんとか、ほかにも友達いるじゃん。なのになんでそうやって1人で抱え込んでんの?」
「……。なんでエリナはわたしに構うの?」
「え?」
「隣の席だから? 宿題見せてもらえるから? いじりやすいから? フシギちゃんだから?」わたしは反撃するように、思いつく限りのことを矢継ぎ早に聞いた。「それともなんか特別な理由でもあるの?」
「それは……」と言いつつ、彼女は思案顔になっていた。「ってかそんなにあたしじゃだめ? ……ちょっとショック」
「おーい」
そのとき、大きな人影がわたしたちに駆け寄ってきた。杉本くんだ。
「なに追っかけてきてんのあんた」エリナがぶっきらぼうに言う。
「ケンカ? だったらおれが仲裁してやるよ」彼はそう言うなりわたしの手を高く掲げた。「須藤さんの勝ち」
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