ツインテールとシュシュ(1)

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 大丈夫、1人で捜すから。そんな言葉が2人に聞き入れられるはずもなく、こうして定期券の一斉捜索がはじまった。わたしたちは地面に目を凝らしながら学校までの道を辿ってゆく。どこかに落ちているとすれば、走ってきた区間の可能性が高い。お前が追っかけたりするからだろと杉本くんがエリナをなじり、ユカが逃げるからだよとエリナがわたしを責める。立場が立場だけに、わたしは「はい」と殊勝にうなずくしかなかった。 「定期って結構高いんでしょ?」地面に目を向けながらエリナが言う。 「……まあ、高校生のおこづかいでどうにかなる額じゃないね」 「いくら? 高崎のほうからじゃ余裕で5~6万は」そのとき、あっと杉本くんがエリナを見た。 「ふうん。やっぱそっちなんだ」なるほどといった表情でエリナがうなずく。 「お前高崎知ってんのかよっ」 「知ってるよ! 群馬の県庁所在地でしょ?」 「それ、前橋なんだけど」とわたしが指摘する。 「ごめん。知られたくなかったんだよね」杉本くんが謝る。 「いいよ。いまさら隠してもしょうがないし」そう言ってわたしは続けた。「ちなみにうち、高崎じゃないから。もっと北のほう。渋川って知ってる?」 「なにそれ群馬の渋谷?」ぜんぜん知らんとばかりにエリナが言う。 「伊香保温泉のほうだよ」さすが北関東出身とあってか、杉本くんの答えは的確だった。「どんくらいかかんの時間」 「ドアツードアで3時間。つまり1日の4分の1は移動時間」  唖然とする2人から目を逸らし、わたしは続けた。「ほんとは新幹線で通うはずだったんだ。でもお母さんが働いてた旅館は廃業になっちゃうし弟も来年高校だし、わたしばっか家計に負担かけるわけにいかなくて……」 「そりゃウツにもなるわな」杉本くんがぽつりと口にする。  わたしは首を振った。「そうじゃないの」 「え?」 「わたしね、振られたんだ。ちっちゃい頃からずっと好きだった人に」  それから、わたしの東京に通う目的がまさにその人であることを打ち明けた。反対する両親を説き伏せ、つらい受験勉強を乗り越え、あげく超長時間の通学に毎日耐えていることを。「バカだよねわたし。入学してまだひと月しか経ってないのにさ、もう東京まで通う目的なくしちゃった……」
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