ツインテールとシュシュ(1)

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 杉本くんは黙り込んだ。想像以上の過酷な実態に、慰めの言葉も思いつかず困惑しきっているに違いない。 「バカだよユカは」しかしエリナは毅然と受け答えた。「そんな遠くから来てるってわかってたら付き合い悪いやつなんて思ったりしないのに。好きな人に振られたってわかれば──その人のことどんだけ好きだったかってわかれば、少しくらいあんたが立ち直る力になったげようと思うよ。あたしじゃ無理かもしんないけど……。でも肝心のユカが話してくんなきゃなんもはじまんないじゃん」 「……」 「ねえユカ。あんたが群馬からこっち通う目的って1つだけ? ほかになんかあっちゃいけないの?」 「え……?」 「逆にさ、あたしは毎日ユカと顔合わせてるじゃん。それだってあたしが学校通う目的の1つだよ。あたし以外にも……案外いるかもしんない。そーゆーモノ好きが」 「モノ好きって失礼だろ」杉本くんが口をとがらせる。 「マニアとかロリコンって言わないだけましだと思うけど」エリナが反論する。 「あのさ」わたしは控えめに挙手した上で口を開く。「杉本くんはわたしに対して失礼って言ったんだよね?」 「そうだよ」と彼がうなずく。 「でもまあ、たしかにエリナはモノ好きだよね」 「同感。いや須藤さんはいんだけどさ、オトコの好みがね。いかにもガリ勉っぽいやつに色目使ったりとか」  杉本くんの言葉にエリナはむきになる。「あれは医者とか弁護士の卵だから。あんたと違って将来性ありそうなやつにはひととおり粉かけとくの」 「でもエリナってじつは草食系好みなんだよね」わたしは指摘する。 「肉食系はこりごりなんだろ。一度変なコマシに引っかかったからな」 「中学で付き合ってた先輩? 三つ股かけられて別れた」  そこまで言ったところで、わたしは地雷を踏んだことに気づく。 「もういいあたし帰る!」エリナが声を荒らげた。「せいぜいあたしの悪口で盛り上がってれば? 栃木群馬で仲良くさ」
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