ツインテールとシュシュ(1)

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 ところで、土曜の最後のコマである3時間目は、全学年全クラスでLHR(ロングホームルーム)となる。普段なら適当な扱いとなるこの学活の時間だが(それだけに、おおむね隔週で休みとなる土曜に追いやられている)、きょう話し合われる内容は来月上旬に行なわれる文化祭についてだった。  決定すべき議案は2つ。1つは、1日目の仮装コンテストの出演者。もう1つは、一般公開となる2日目のクラスの出し物。  まずは後者を決めることになった。喫茶店その他飲食店、お化け屋敷、カジノなど王道的な提案が次々となされ、クラス委員によって黒板に書き出される。概して、女子の姿勢は積極的な一方、男子は冷めていた。そんな彼らの支持を多く集めたのが『休憩所』。これは、教室をフリースペースとして開放するだけのおよそやる気のない代物である。提案者ももちろん男子で、そもそも男子による提案がそれとメイド喫茶の2点だけだった(『自粛』というのもあったが、これはもはや提案ではない)。しかし女子の多くはこれらに反発、丁々発止のやりとりの末、ノーマルな喫茶店という無難な線で決着を見た。わたしはといえば、とくに発言することなく議論の行く末をただ見守っていた。  ところがもう1つの議案に移ると、とたんに教室は沈黙に包まれた。先ほどまで盛り上がっていた女子も誰1人口を開こうとしない。それもそのはず、仮装コンテストの出演者として選出される2名の男女は、いわばクラスからの生贄に等しい。全校生徒のピエロ役に立候補者する者など皆無で、押しつけのように推薦される者たちも一様に固辞するありさまだった。となると、必然的にくじ引きなど平等な方法で決めようという流れになる。  と、そのときだった。「提案」とエリナの手が挙がった。「先にさ、なにに仮装するか決めてみない? キャストありきじゃなくてさ」
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