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「ケンカ? それとも別れた?」
帰り道、わたしはエリナと2人きりだった。それだけに『あたしにはほんとのこと話しなさいよ』というニュアンスがその言葉に込められている気がした。
わたしが答えに迷っていると、彼女はまるで刑事の取調べさながらに問い詰めてくる。「休みなんてウソでしょ。さっき見かけたもんユカの彼氏」
ネタは挙がってんだと言わんばかりである。ただただ、わたしはため息をつくしかなかった。「……みたいな人、でしょ?」
「どうなの」
「エリナの言ったとおりだった」淡々とそう応じた。「別れたんじゃないよ。だってただのトモダチだったんだもんわたしたち。カノジョができたって笑顔で言われてハイオシマイ」
マジ? と彼女はさすがに眉をひそめた。「あんた引き止めようと思わなかったの?」
「相手、気になるでしょ。彼と同じ1組の柿崎さんって人。知ってる?」
「柿崎……?」今年入ったコかな、とエリナは首を傾げる。
背高くて髪長くてほっそりしてて……。わたしが彼女の特徴を挙げると、あー見たことある! とエリナは声を上げた。「ありゃだめだ。あたしでもかなわん」
「美人で頭よさそうだもんね。きっと苦手な英語もあの人に教わってたんだ」
ドンマイ、とエリナはわたしの背中を叩く。まるでご愁傷様とでも言うように。
「エリナのほうはどうなの」わたしは話題を変えた。「告られたって言ってたじゃん」
「振ったよ。片思いの人がいるからって」
「そうなの?」フツーに考えれば嘘に決まっているのに、わたしはなぜかその言葉を真に受けた。
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