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最近、結衣の口数が減った。天井をじっと見つめ何かを考えている。
僕もイスに座り天井を見上げる。言葉を探しては、それを飲み込んだ。
閉めきってあったカーテンを開けようとして、結衣に止められる。
「遥汰……」
「どうした?」
ベッドの上で上半身を起こしている。
読んでいた小さな本に栞を挟み、枕元に置く。
ギュッと唇に力が入るのが見えた。
僕のことを見ようとはしない。
「もう、ここ、……来なくていいよ」
「……どうして?」
「どうしてって……私、もうすぐ死ぬんだよ。知ってるでしょ?」
そんなことは絶対にない。
そう言ってあげられなかった。
「そんな顔で私のこと見ないでよ」
「何か言いなさいよ」
枕元の本を僕に投げつけて泣き出した。
「……ごめんなさい。私……」
謝る必要なんてどこにある?
横に座り、髪を撫でる。
口を開いても、きっと何の救いにもならないだろう。
寄り添い、手を握ることしか出来ない。
自分の無力さを呪った。
「ずっと側にいるから」
結衣が小さく頷いた。
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