第1話 ハジマリ

1/4
前へ
/5ページ
次へ

第1話 ハジマリ

私は今、一人で箱根に来ている。 何故、一人なのかは……、……うん。 まぁ、いわゆる傷心旅行と言いましょうか……ねっ? 正直、あんなことになろうとは…。 そしてまた…、『桜』の姓を名乗る事になろうとは…っっ …そう。私、桜すみれは、 10年間連れ添った夫と、つい先日離婚しました! まさかですよ。 マイホームに子供も二人いて、さぁ!これからだぞー!!って時に、夫の浮気が発覚… そう。疑いもしなかった。 夫は2こ上の30歳。 エリート街道まっしぐらってやつだった。 残業がいくら続いても、嫌な顔一つ見せずに、家族サービスだってしてくれるし、私にも子供達にとっても、正に理想的な旦那、パパだったのに…。 だけどある日… 夫が会社に泊まると言った日が1日だけあった。 そんな日に限って、次男の春都が高熱を出してしまい、挙げ句の果てには長男の風斗までも嘔吐を繰り返す始末… 風斗は3歳、春都は1歳… 特に、次男の春都は体が弱く、何度も何度も入退院を繰り返していた。 夫の実家も私の実家も、車で2時間はかかる所にある為、こんな時はいつも夫と二人で頑張ってきたのだが… 私は、淡い期待を胸に抱いて、夫の会社に電話をかけた。 子供達の具合が悪いのなら、もしかしたらと思ったのだ。 しかし… 夫は、会社にいなかった。 『18時半には退社されました』 その言葉を聞いた瞬間、 目の前が真っ暗になった。 色んな事が頭を駆け巡った。 あの優しい夫が私に嘘を…? 私は、いつの間にか震えていた手で、夫のケータイ電話に電話をかけた。 嘘…ついてないよね? 会社の人が勘違いしてるだけだよね…? だけど、頭の中は悪いことばかり考えていて… 『はい(笑)もっしもーし!あなたの旦那様のケータイでぇーす!(笑)』 私はその場で崩れ落ちてしまった。 しかし、ショックで動かない訳には行かなかった。 子供達を何とかしなければ。 こんな時、本当に子供達がいてくれて良かった。 心からそう思った。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加