別れの時

4/22
2121人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
助手席で楽しそうに 来年の春に受験する高校の 事を話してくれる亜希ちゃんに 微笑んで相槌を打ちながら 私は心の中でその言葉を どう孝之に伝えるべきか 必死に考えていた。 病院に着いて、 エレベーターに乗り込み ボタンを押す指が戸惑う。 孝之の病室がある5階。 聖が今、必死に戦っている7階。 まるでそのボタンを選ぶ事が 私の人生の行く末を 決める行為のように感じて… ボタンを見つめたまま 押せない私に亜希ちゃんが 首を傾げて隣から 5階のボタンを押した。 「あ…亜希ちゃんごめん」 「いえ、 でも紗枝さん大丈夫ですか? なんか顔色悪いけど」 さすがに昨夜は寝ていないだけに 私…くたびれた顔してるのかな…。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!