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第15章 探偵登場
木内刑事は、苛立って机を叩いた。
昨日、軽井沢署に、捜査協力を頼んだのだが報告がなかった。今朝、再び確認の電話を入れたが、軽井沢署は非協力的だった。
夏の観光シーズンで、忙しいのは分かるが、電話口からは、
「どうせ、佐久署は暇なんだろう」
という、小馬鹿にした雰囲気を感じた。
更に、癪(しゃく)に障(さわ)ったのは、
「被害者は、佐久に宿泊していた可能性が高いですね」
と的外れな推理を押し付けられたことだった。
軽井沢署が協力してくれないのなら仕方ない。自分たちで、手当たり次第に電話するしかない。
意気込んでみたものの、電話帳を広げてうんざりした。宿泊施設が何軒あるのか数えるのも嫌になった。
朝から電話し続けたが、手掛かりはつかめなかった。
部下の金子も、顎鬚(あごひげ)をいじりながら、つまらなそうに電話をしていた。
今日は、部下の金子とデスクに齧りついて、電話口で同じ台詞を、一日中、繰り返すことになりそうだ。
半ば諦めかけていた頃、情報提供の電話があった。
軽井沢のホテル従業員からだった。
ニュースで見た身元不明の遺体の特徴が、宿泊客に似ているという話だった。しかも、その宿泊客は、軽井沢で湯川の撮影をしていたというのだ。
「やっぱり、俺の睨んだ通りじゃねぇか」
木内は、得意げになって、金子に言った。
「そうっすね。軽井沢署の連中が、もっと協力してくれれば、昨日の内に、身元が判明したかも知れなかったっすね」
「全くだよ。はなから協力する気がねぇんだ、あそこの署は」
木内は、不満を言って唇を噛んだ。
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