第15章 探偵登場

1/9
前へ
/36ページ
次へ

第15章 探偵登場

 木内刑事は、苛立って机を叩いた。  昨日、軽井沢署に、捜査協力を頼んだのだが報告がなかった。今朝、再び確認の電話を入れたが、軽井沢署は非協力的だった。  夏の観光シーズンで、忙しいのは分かるが、電話口からは、 「どうせ、佐久署は暇なんだろう」 という、小馬鹿にした雰囲気を感じた。  更に、癪(しゃく)に障(さわ)ったのは、 「被害者は、佐久に宿泊していた可能性が高いですね」 と的外れな推理を押し付けられたことだった。  軽井沢署が協力してくれないのなら仕方ない。自分たちで、手当たり次第に電話するしかない。  意気込んでみたものの、電話帳を広げてうんざりした。宿泊施設が何軒あるのか数えるのも嫌になった。  朝から電話し続けたが、手掛かりはつかめなかった。  部下の金子も、顎鬚(あごひげ)をいじりながら、つまらなそうに電話をしていた。  今日は、部下の金子とデスクに齧りついて、電話口で同じ台詞を、一日中、繰り返すことになりそうだ。  半ば諦めかけていた頃、情報提供の電話があった。  軽井沢のホテル従業員からだった。  ニュースで見た身元不明の遺体の特徴が、宿泊客に似ているという話だった。しかも、その宿泊客は、軽井沢で湯川の撮影をしていたというのだ。 「やっぱり、俺の睨んだ通りじゃねぇか」  木内は、得意げになって、金子に言った。 「そうっすね。軽井沢署の連中が、もっと協力してくれれば、昨日の内に、身元が判明したかも知れなかったっすね」 「全くだよ。はなから協力する気がねぇんだ、あそこの署は」  木内は、不満を言って唇を噛んだ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加