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「まぁ、細かい名前は、どうでもいいだよ。所で、被害者とその専務はどういう関係にあったんだい?」
「詳しくは知りませんが、矢崎さんの写真に感動した専務が、無料でスィートルームを提供したらしいです」
「へぇ、羽振りの良い専務だな」
「いや、実は、ケチで有名な人なんです。その専務が、無料でスィートを貸していると聞いたので、ちょっと驚きました。写真には、我々のホテルが写っていたので、それなりの宣伝効果はあるとは思いますが」
「なるほど、宣伝効果か…」
「それと、専務からパンフレットの写真を依頼されていたみたいです。矢崎さんは、湯川以外にも石尊山や追分周辺、その他の軽井沢の観光名所を撮影すると話していました。ちなみに、遺体の発見現場は、湯川のどの辺りだったんですか?」
「鼻顔稲荷の真下だよ。そこから2キロほど上流で、ホトケの物と見られるカメラが見つかっている。おそらく、そこで足を滑らせて、石に頭を強打し、そのまま流されたのだろう。いわゆる、事故死だな」
「矢崎さんは、そんな所まで行ったのですか。でも、おかしいな」
犬養が、釈然としない様子で首を傾げた。
「何がおかしいんだい?」
「矢崎さんは、白糸の滝から釜ヶ淵まで撮影すると話していました。佐久まで行くとは言っていませんでしたけど」
「気が変わって、下流まで撮る事にしたんだろう。よくある事だよ」
「刑事さん、質問なんですが、矢崎さんのカメラ内のフィルムは現像しましたか?」
「あぁ、したよ」
「その写真で、最後に写っていたのはどこですか?」
「えーと、確か釜ヶ淵だったかな」
「遺留品が見つかった付近の写真はなかった訳ですね」
「あぁ、なかったよ。」
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