第一章 あの時のクラスメート

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「賑やかな沖田さんだろ。隣に居た更に賑やかなのは誰だったっけ? 俺の記憶では沖田より賑やかなのは居ないんだが」 「草薙美央よ、分からないの?」 「草薙も三年の時同じ組だったのか。 しかしあんなに賑やかだったか?太ったなあ。」 「岡西さんの事は何で分かったの?」 「文化祭の人形劇の監督だからな。あと矢萩。悪党2号の声だったから」 迫水は悪党1の声をやったカメラオタクの林田が撮った 総子のミニスカートの写真が、強く印象に残っていた。 川村はポートレートにして監督席に置いたりしていたが、総子は嫌がる風も無かった。 「時の流れとは残酷なものだな」 「何、藪から棒に」 「否、何でもない」 「あら、ツッパリ軍団が出てきた。三人共禿げちゃったわね。最初誰だか分からなかった」 「ツッパリは男性ホルモンが多いから禿げるんだ。 長谷川が自己紹介をやらないから、誰が誰だか分からないんだよ」 「右から菊田君、森君、山口君」 「あっ。見いつけた。王様の声のショウ君でしょ。」迫水と美央・みづほが そう会話している間にも、 ショウの隣に女子3人が寄ってきた。 菊田・森・山口・・・学生時代、我が物顔で青春を謳歌していたツッパリ組達が、 殆どツルッパゲもしくは、茶髪のリーゼントパーマは薄毛と茶に染めきれない 白髪が異様に目立ち、 いくら清潔に洗髪しても痛々しい惨めな感じさえする。 もはや・・黒髪の殆ど無い廃棄されたいくつもの鳥の巣が天頂だけピカピカ光っている。 そんな風景だった。 今日の展開は、迫水にとって思いがけないサプライズだった。 高校生時代「黒子キャラ」だったので、皆から「誰?」と言われると想定していた。 そもそもショウが「私は迫水晶ですよ。」と周囲に言わなきゃならない事は覚悟し、 当たり前の事だと思っていた。 ショウを囲んだ元女子クラスメートの話題は3年生の時の合唱大会に移った。 「ヒガシくん、あなただったよね。あの合唱大会の指揮者。」 「そうそう、あのワーグナのタンホイザー入場行進曲。あれ難しかったな。」 「優勝目指して、カッコいい曲選んだけど、出来がちょっとね。」 「ヒガシくんの指揮オーバーアクションでカッコよかったっけ?」 「でも今はツルッパゲじゃないか。ガハハ。」 話題の中心になっている東恭二が言った。 「みんな、聞いてくれ。違うよ。指揮者は俺じゃないよ。
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