第15話

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助けて。 私はまだ、死にたくはない。 残したものがある。 それが何かはわからない。 でも残したものがある。 何かは言えない。 それは形の残るものであり。 残らないもの。 形はないもので。 どこにでもある安いもの。 どこにもない珍しいもの。 歌声のように美しく。 泥水のようでありながら。 時にはこの世のものではないくらいの輝きを持つ。 私はそれを残し忘れた。 それがこの世に残した最後の悔いだ。 誰か私を拾ってくれ。 もう少しで、残せそうなんだ。 誰か。 最後に私の言葉を聞いてくれ。
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