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「……ごめん、まだ早いのはわかってる。君が半年の養育期間を終えて大人になったら、していいかな?」
「あの……、ぼく、それからもずっと……、あなたのおそばにいていい?」
「いいよ」
「じゃあぼくも……、していいよ」
はずかしそうに顔をそむけると、ふわりと赤斑の甘い香りが広がる。
発情期のティオが、相手だけを誘う香り。
これを平静でいられるほうがおかしいはずだ。
やむを得ず、ティオに背中を向けて、ベッドに座った。
ティオも起きあがって、肩越しにそっと様子を窺ってくる。
「ぼく……、しようか?」
「なにを言うんだい。あんまり見るなよ、恥ずかしいじゃないか」
ティオはベッドを降りてイグノトルの正面にまわり、手で隠す動きをじっと見ていた。
「こら、……子供は見ちゃだめだよ」
ティオが不意に瞳をとじて、ぎこちないながらも唇に口づけをくれる。
ほんのわずか触れられただけなのに、思考がかき乱される。
わざと冷静さを装い、笑ってみせた。
「自分からするんだ。やっぱり男だね」
「男だと……いや?」
「もうわからないよ」
ティオは自分の赤斑に手をあてて、それから隠しているイグノトルの手の上に両手を置いた。
イグノトルがティオを横に座らせ、その肩に額をあずけ、瞬間、声をこらえる。
「これ……、君をどうにかしたことに……なるのかな」
「えっと……」
「君は嫌がってないし、一線も越えようっていうんじゃないし、このくらいなら、……いいのかな」
「あ……」
お互いに判断がつかず、苦笑するしかない。
「ごめんね、見苦しいもの見せて」
「そ、そんなこと! ぼくにしてくれたのと……同じだから、平気」
「……そう?」
気をよくして、いたずらにティオの腰のあたりに指をふれる。
「あ……」
「半年後にはここを私で満たして、君の名前を呼んであげようね」
「……ふ……っ……く」
「おや、感じちゃったかい?」
「ごめ……ん、なさ……」
「謝ることじゃないよ。ここから自分でしてごらん」
「そんな……。ぼく……、いやになった?」
「違うよ。私は君が心配なんだよ。どこへでも連れて行ってあげられるわけじゃない。辛くて喪失の病を発症しそうになったら、私を思い出して自分でするんだよ。そうしたら私が存在していて、ちゃんと帰ってくるってわかるだろう?」
「……はい。でも、見ないで……」
「まあ……、それはいいか」
こそこそと毛布の中にもぐり、ティオがいるふくらみが揺れている。
「……できる?」
恥ずかしいのか、返事がない。
「……お茶、医務室で用意してくるよ」
隠れて頑張る姿は見えなくても、いや……、あえて見えないほうが扇情的なのかもしれない。
「……ん」
返事が、艶を含む声だった。
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