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「かわいそうに、おびえているのにひとりずつなんて無理だよ。養育先で何があったかわからないのに、いくら私が医師でも初めて会う天使とふたりきりにされるなんて怖いに決まってるよ」
「しかし、はぐれティオは個々に事情がありますから、見られたり聞かれたりしないようにという国王様のご配慮です」
「ご配慮ね。君はこの現状を見て何とも思わないかい?」
「何とか……してやりたいとは思いますけど」
「国内だけでやろうとするから、養育に適さない天使のところへもティオが行かされるはめになるんだよ。レーゼ国はティオの数が多い国だという自負があるけど、その結果こういう子たちがうまれるなら、国外に支援を頼めばいいのに」
「そうすれば、ますます目が届かなくなると、国王様は」
「おっしゃるよね、あの方はおやさしいから。それで誰を救えるんだい。結局は孤独に震えて大地を崩壊させるという地竜をなぐさめるためだけに最も純粋だとされるティオ種を、しかもその行方さえどうなってもいいようなはぐれティオを集めておいて、いらなくなったらほうり出す」
「国王は診察を受けさせて、ティオたちを自由にしたいだけですよ!」
「それが綺麗事だって言うんだよ。ひとりひとりの事情をきいて解決に導いてやればいいものを、ちょっと親切なところを見せて、あとは放置するんだよ。自由といえば聞こえはいいけどね」
「そんなことはいいですから、診察を」
「この子たちにだって聞く権利はあるんだよ。王婿殿下、あなたは国王にいちばん近く、はぐれティオたちにとっても近しい存在だ。自分たちの声を国王へ繋げてもらえる可能性を持った存在だ。なのに、君は国王の命令だけに忠実だった。ティオたちはさぞ君に失望したことだろう」
「私は同じティオ種だからと、侮られているわけですか」
「そこにしか気づかないなら、私は君に言うべき言葉はないよ」
イグノトルが翼をひろげる。
おびえた顔をしたティオたちが一瞬、その光をとらえようとするように医師のほうへ顔をあげた。
「殿下、失礼ですけど、診察させていただきますよ」
「は?」
王婿の衣服の上から胸や背中に触れ、異常がないかを確かめ、やや離れて指をたてる。
「何本に見えますか」
「三本……ですけど」
近づいて握手を求めるように手を出し、上にむける。
「右手をだして」
「何の検査ですか」
言いながら、指示に従う。
「はい左手。次は両手。よくできました」
頭をなで、そこからさりげなく天使の力が与えられたのがわかった。
「あ……」
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