凛と桜の木

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  凛は顔を上げると、 満面の笑みで頷いた。 「うん!」 その答えに、 白雪は嬉しそうに笑って「ね?」と続ける。 そんな彼女の隣で笑みを返しながら、 ふと凛は赤く染まり始めた夕空を見上げた。 (負けまへんからね、平助君) 相手が「大人」だろうが、 自分が「子供」だろうが、 そんなの関係ない。 …欲しいと思った「男」は、 自らの「美しさ」と「技量」で落とすのが、 島原の「遊女」の心意気。 …今はまだ小さくても、 彼の目にも映らない「蕾」だとしても… いつの日かきっと誰もが目をそらせないような、 美しい「花」になってみせる。 (…その時は…) …もし、 いつかそうなれた暁には… 自分が感じた苦しみや切なさ、 そして何より… 自分に与えられた温かな想いや「幸せ」を、 彼にも返すことが出来るだろうか…。 「…ううん、絶っ対に返したる!」 突然そう声を上げた凛に、 白雪は思わず「は?」と目を丸くした。 「凛?急にどうしたの?」 不思議そうに首を傾げる白雪に、 「何でもありまへん」と苦笑して答えると、 凛は再び前を真っ直ぐに見据える。  
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